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 頭の中で警告音が鳴る。

 ダメだ。

 気づかれてはいけない。

 優奈にだけは……しかし、優奈は確信しているのだろう。

 俺が海音ではなく山音だと。

 両親にもバレないから大丈夫だと思っていたが、やはりダメだったか。なるべく優しく声を掛け、優奈を甘やかした。

 それなのに……。

 やはり海音で無ければダメなのか。

 もともと俺は優奈のことが好きだった。海音に優奈を取られたときは正直ショックで、二人を見ていられない時期もあった。

 あの日、事故の連絡を受けて、壊れそうなほど泣きじゃくる優奈を見て、壊れてしまうと思った。だから咄嗟に自分が海音だと言ってしまった。

 海音の変わりでいい。

 優奈の側にいたい。

 それを望んでしまった。

 バカだった。

 こんなことをして、自分を殺して……。

 何をやっているんだろう。

 これは罪になるんだろうか?

 自分を殺すとどうなるんだろう?

 神への冒涜?

 神は信じないが、俺は天国には行けない気がする。

 海音は天国へ行けただろうか?……俺のせいで行けなかったのなら……ごめん……。

 俺のせいだ。

 謝っても謝りきれない。

 海音……ホントにごめん……。

 俺の前で俺を山音を呼び、「山音また明日」と言いながら泣きじゃくる優奈の姿がグニャリと一転する。

 意識が遠のく中、俺はもう一度「ごめん」と謝った。

 俺の意識はそこで途切れた。