桜が嫌いになった理由

 それでもアサミは涼しい顔して言った。
「また来年見に来たらいいよ」

 僕は頷き、しばらくしてから、思わず目を見張った。
 来年も彼女が僕のそばにいてくれるという意味だったから。

 失望が一転して希望に変わったのだった。
 僕はその夜、しみじみ思った。

(桜が咲いてなくてよかった……)

 おかげで、僕はアサミの本当の気持ちを測ることができたのだから。
 そうして、僕らはその後、夏を迎え、秋を共に過ごし、自然と付き合う方向へ進んでいった。

 少なくとも僕は、そう思っていた。