44話(湊視点)
~4年前~
小学4年生、夏
「え……?」
「あんた、こんな時間まで何やってたんだ。うろうろほっつき歩いて、ダメな子だね。こんな子、家にいらないわ」
「お、お母さん……?」
そして、またボクはたたかれた。
パシッ、パシッ
頬を強く、何回も叩かれる。
「痛い、痛い」
声に、してもやめてもらえないことは、わかってる。
それでも、声に出た。
「お母さん、やめて、やめて」
この時間なら、お父さんがいるはずなのに。
いても、お父さんも止めてくれないけど。
もう、ボクが悪かったんだ。全部。ボクが。ボクがいるから、お母さんも、お父さんもおかしくなっちゃうんだ。
ボクさえいなければ、こんなことにはならなかったのかな。
ボクさえいなければ。



