あの夏の約束

41話(湊視点)

~4年前~

小学4年生、夏
『一緒に遊ぼうよ』
その言葉を笑顔で言われたときはうれしかった。
だけどその気持ちとは、ちがうもやもやした気持ちがあった。
あの、気持ち。
お母さんに、お父さんがいないときに、いつも向けられている、作られた、偽物の笑顔。
ボクはそればっかり見てきたから、本当の笑顔がわからないから
あの笑顔が本物なのか偽物なのか、わからなかった。だから

……ただただ怖かった。

「誘ってもらえたの、うれしかったし遊びたいな……」
だけど、なんでだろう。
なんで逃げたんだろう。
そしてしばらく歩き続けていた。
そのとき
「あ!いた!」
さっきの女の子が、走って追いかけてきた。
「あ……」
ボクはまた、逃げようとした。
だけど、後ろから、捕まれて動けなかった。
「えっ!」
「だめだよ、逃げちゃ」