あの夏の約束

29話(夏芽視点)

私は受話器を取った。
「も、もしもし」
「…………」
「入野、港……さん、ですか?」
「………………」
沈黙が続いた。
「……そうだ、よ。夏芽」
「港、港ぉ……」
港だ、港だ!
そして、港が私に聞いていた。
「夏芽、このゲームで、ボクに何か質問があるんじゃないの?」
「あ」
私はいつもより声のトーンを落として、港に聞いた。
「このゲームを作ったのは……港?」
「……そう、だね、半分正解で半分不正解」
半分正解、半分不正解……?
「半分……?」
「そう。このゲームはね、ボクが神様に頼んで作ってもらったんだ」
神様
「………………」
「神様だよ。ボクが頼んだんだ。一応、ボクもこのゲームの盤上にはいるしね」
「……え……?」
あ、もしかして……
「祈里……?」
「…………さぁね。どこまでを、信じるのかは、夏芽しだいだね」
港、なんでそんなこと言うの?
「私は、みんなが言うことは信じるんだよ」
「……そうだ……ね」
「このことは、誰かにいってもいいよ。だけど、この電話は1回しか使えないからね」
「う、ん」
回線が乱れてきた。
最後に港が言った。回線が乱れていたけど、ギリギリ聞き取れた。

「夏芽、2年前の事故のこと、ごめんね」

私はもう、回線がつながってないのはわかっていたけど、受話器に向かってつぶやいた

「謝らないでね、港」
港が謝ることは何もないから。