「____さて、どう探そうか」
学校帰りのファミレスで、ドリンクバーのジュースをストローで混ぜる。
家族以外とこういう場所に来るのは初めてで、なんだか落ち着かない。
いや、これから山下くんが私の好きな人だって話すから落ち着かないのかな。
「クラスも名前もわかんないんじゃ、始まらないもんね」
うーん、と私がただ黙ってジュースを吸い上げている間も頭を傾けながら小さく唸っている。
「あのねっ」
勢いだけで声を出した。まだ緊張している私の心音はその度合いと比例して大きくなっていく。
「ん?いい方法思いついた?」
瞳が驚くほど輝いた。まるで紗夜ちゃんのいるところだけに光が集中しているみたいに。
「そうじゃないんだけど……」
あと一歩、勇気がでたら。
話すつもりだったじゃないか。そのつもりでここに来たはずなのに。
不安だけが私の心をじわじわと押し潰してくる。
「どうかした?」
コップから手を離して、私の手をそっと握った。
さっきのキラキラとは一変して、落ち着いた声色で私の背中をゆっくり押してくれる。
「あのね。……見つかったの。私の好きな人」
「えっ!」
あまり騒がしくない店内に、紗夜ちゃんの透き通った声はよく響いた。
一瞬シンとした時間が流れたけど、それはすぐになかったように小さなざわめきが戻った。
「え、誰だれ?」
「……山下くん、なんだ」
「山下って、いっちゃん?」
その質問に、ドキドキしながら頷くと、まるで珍獣を見るように私のことを見ている。
……やっぱり、言わないほうがよかったかな。
「うん。いいと思う。いっちゃんはちょっと雑だけど、いいとこあるからさ」
そっかそっかと、小さい声で言うその声色はどこか嬉しそうで、私の不安は一気に払拭された。
「でも、でもね。山下くんに近づくために紗夜ちゃんといるわけじゃないからね」
「そんなのわかってるよ。私のがちゃんと知り合ったのは先だもん」
この場にいない山下くんにマウントを取るように自慢げに話す姿に、私も心の底から嬉しく感じた。
「さて、どうやってあいつ落とそうか」
ぐいっと机に近づいて、両手の握りこぶしを机の上にどんと置いた。
まるで落とし穴に憎い人を落とす計画を立てようとしている言い方だけど、そんな意外と面白みのあるところが見れて彼女をもっと好きになった。
「紗夜ちゃんはどうやって彼氏のこと落としたの?」
「え、聞きたい?」
頬を染めながら、恥ずかしそうに、でも話したそうに微笑んだ。
「うん。聞きたい」
そして私も、柄にもなく興味津々で。
紗夜ちゃんと同じように机に身体を寄せた。
「私と彼、同じ中学だったの。でも好きって気付いたのは卒業してちょっとしてからなんだけどね」
「うんうん」
「たまたま再会したの。そのときに彼との思い出が一気に蘇ってきて、動揺して転んじゃってさ。そしたらそっと手を差し伸べてくれて、この人はこういう人だったなって。この手を離したくないって思ったんだ」
本当に愛おしそうに、そのときの思い出を話してくれる。
なんて可愛らしいんだろう。
恋をすると女の子は可愛くなるというけど、本当なんだ。
「その日のうちに連絡先交換して、事ある毎に相談とかでメールしてた。その度に会って話聞いてくれたの」
なるほど。第一関門は連絡先の交換なんだ。
「そういえば、いつからあの人、私のこと好きなんだろう」
そんなことを言い始めたから、きっと落とすとか意識的なことをなにか特別にしていたわけじゃないってことなんだろうな。
「ごめんね、参考にならなかったね」
暑そうに手で自分のことを仰ぎながら、照れ笑いを浮かべていた。
「そんなことないよ。十分だよ」
「そう?」
「うん。私、とりあえず連絡先交換するの頑張ってみようかな」
スマホをぎゅっと握って、まずは一つ。
なんだか意外とハードルが高いことを目標に設定してしまったけど、頑張るって決めたんだ。
「いいねいいね!何かきっかけがあれば聞きやすいんだけどなー……」
どうしよっか。
そう、明るく楽しそうに話す紗夜ちゃんと、日が落ちるまで作戦を立てていた。
学校帰りのファミレスで、ドリンクバーのジュースをストローで混ぜる。
家族以外とこういう場所に来るのは初めてで、なんだか落ち着かない。
いや、これから山下くんが私の好きな人だって話すから落ち着かないのかな。
「クラスも名前もわかんないんじゃ、始まらないもんね」
うーん、と私がただ黙ってジュースを吸い上げている間も頭を傾けながら小さく唸っている。
「あのねっ」
勢いだけで声を出した。まだ緊張している私の心音はその度合いと比例して大きくなっていく。
「ん?いい方法思いついた?」
瞳が驚くほど輝いた。まるで紗夜ちゃんのいるところだけに光が集中しているみたいに。
「そうじゃないんだけど……」
あと一歩、勇気がでたら。
話すつもりだったじゃないか。そのつもりでここに来たはずなのに。
不安だけが私の心をじわじわと押し潰してくる。
「どうかした?」
コップから手を離して、私の手をそっと握った。
さっきのキラキラとは一変して、落ち着いた声色で私の背中をゆっくり押してくれる。
「あのね。……見つかったの。私の好きな人」
「えっ!」
あまり騒がしくない店内に、紗夜ちゃんの透き通った声はよく響いた。
一瞬シンとした時間が流れたけど、それはすぐになかったように小さなざわめきが戻った。
「え、誰だれ?」
「……山下くん、なんだ」
「山下って、いっちゃん?」
その質問に、ドキドキしながら頷くと、まるで珍獣を見るように私のことを見ている。
……やっぱり、言わないほうがよかったかな。
「うん。いいと思う。いっちゃんはちょっと雑だけど、いいとこあるからさ」
そっかそっかと、小さい声で言うその声色はどこか嬉しそうで、私の不安は一気に払拭された。
「でも、でもね。山下くんに近づくために紗夜ちゃんといるわけじゃないからね」
「そんなのわかってるよ。私のがちゃんと知り合ったのは先だもん」
この場にいない山下くんにマウントを取るように自慢げに話す姿に、私も心の底から嬉しく感じた。
「さて、どうやってあいつ落とそうか」
ぐいっと机に近づいて、両手の握りこぶしを机の上にどんと置いた。
まるで落とし穴に憎い人を落とす計画を立てようとしている言い方だけど、そんな意外と面白みのあるところが見れて彼女をもっと好きになった。
「紗夜ちゃんはどうやって彼氏のこと落としたの?」
「え、聞きたい?」
頬を染めながら、恥ずかしそうに、でも話したそうに微笑んだ。
「うん。聞きたい」
そして私も、柄にもなく興味津々で。
紗夜ちゃんと同じように机に身体を寄せた。
「私と彼、同じ中学だったの。でも好きって気付いたのは卒業してちょっとしてからなんだけどね」
「うんうん」
「たまたま再会したの。そのときに彼との思い出が一気に蘇ってきて、動揺して転んじゃってさ。そしたらそっと手を差し伸べてくれて、この人はこういう人だったなって。この手を離したくないって思ったんだ」
本当に愛おしそうに、そのときの思い出を話してくれる。
なんて可愛らしいんだろう。
恋をすると女の子は可愛くなるというけど、本当なんだ。
「その日のうちに連絡先交換して、事ある毎に相談とかでメールしてた。その度に会って話聞いてくれたの」
なるほど。第一関門は連絡先の交換なんだ。
「そういえば、いつからあの人、私のこと好きなんだろう」
そんなことを言い始めたから、きっと落とすとか意識的なことをなにか特別にしていたわけじゃないってことなんだろうな。
「ごめんね、参考にならなかったね」
暑そうに手で自分のことを仰ぎながら、照れ笑いを浮かべていた。
「そんなことないよ。十分だよ」
「そう?」
「うん。私、とりあえず連絡先交換するの頑張ってみようかな」
スマホをぎゅっと握って、まずは一つ。
なんだか意外とハードルが高いことを目標に設定してしまったけど、頑張るって決めたんだ。
「いいねいいね!何かきっかけがあれば聞きやすいんだけどなー……」
どうしよっか。
そう、明るく楽しそうに話す紗夜ちゃんと、日が落ちるまで作戦を立てていた。


