今日友達ができた。
その友達の幼なじみが私の好きな人だった。
「ねぇ、言っていいのかな?気まずくないかな?」
縋るように夕方の神社で藍に話すと、わかりやすく不器用な笑顔を浮かべた。
「きっと紗夜ちゃんは話してもらえない方が悲しいと思うよ。紗夜ちゃんと山下くんは違う人間なんだから、気にしないでいいんじゃない?」
「そっか、そうだよね」
確かに、もし私に幼なじみがいたとして、藍がその人を好きだけど言ってくれなかったら寂しい。
それを事前に聞いていたなら、尚更だ。
「ありがとう。明日、ちゃんと話す。だからごめん、明日会えなくなっちゃうんだけど……」
「大丈夫だよ。むしろ雛乃が前を向いてくれて嬉しい」
「ありがとう」
ねぇ、気付いてる?
なんだかすごく寂しそうな顔をしていること。
今にも泣き出してしまいそうで、触れたら壊れてしまいそうで。
私の手は、ギリギリまで近寄ったくせに藍に触れることができなかった。
「雛乃。これから会うの、週に二回に減らそうか」
不意に立ち上がった藍は、寂しそうなくせにそんな提案を私に投げてきた。
「え、なんでなんで?今まで通りでいようよ」
「それだと新しい友達と遊ぶ約束をするたび私と会ってから予定立てないといけなくなるよ。付き合い悪いって思われて、せっかくできた友達を失ってほしくないの」
「でも」
「大丈夫。私は会えなくても、ちゃんと雛乃のこと思ってるから」
全部私のことを思って言ってくれているってわかる。
それを無下にできない性格だって、きっと私よりも藍のほうがわかっている。
「……わかった。じゃあ月曜日と金曜日がいい」
きっと今の私はわかりやすく不貞腐れている。
それでもやめるとは言わずに了承する藍を見て、なんだか一気に寂しくなった。
私は藍に週に二回しか会えなくなるなんて寂しくて、きっと授業の内容もしっかり頭に入ってこなくなるのに。
藍は私に会えなくて平気なのかな。
さっきの寂しそうな顔は、見間違いだったのかな。
「その代わり、その二日は色んな話しようね」
まるで私の心を読むみたいにそう言った。
「約束だよ?」
「うん。私のことなんて考えずに、ちゃんと学校は楽しむんだよ?」
それは多分、ムリだけど。
私は笑って「わかった」と答えた。