「ねぇ、このあといっちゃんと遊びに行くんだって?」
ワクワクした口調で私の肩に触れる。
紗夜ちゃんのほうが楽しそうなのは、彼女はこのあと彼氏とデートだからかな。
「うん。私、大丈夫かな?」
「大丈夫だよ。自信持って行っておいで」
いつも通りの日常。
なにか物足りないけど、その原因はわからないまま、私は紗夜ちゃんに手を振って下駄箱まで急いだ。
「雛乃、おまたせ」
「全然待ってないよ」
憧れていた会話を経て、私たちは二人で学校を出た。
思い出すだけで暴れてしまいそうなハグをしたあの日から、なんだかぐっと距離が縮まったような気がする。
「雛乃はなにが好きなの?」
「え?」
「この前は俺が好きなこと付き合ってもらったから、今日は雛乃が好きなことしたいなって」
好きなことか……。
少し考えてみるけど、記憶がごっそり抜け落ちたみたいに今までなにが楽しかったのか思い出せない。
「よくわかんない……。でも、今こうして過ごす時間は好き」
誰かといると、一人だと見られない景色が見えて。
今まで縁のなかったことに触れられて。
新鮮で、最近は毎日が楽しくて仕方ない。
「そう?」
「うん。紗夜ちゃんといるときとか、山下くんといるときとか。世界がね、キラキラして見えるの」
キラキラしていて、知らない色がたくさんあって。
パズルのピースがどんどんハマっていくみたいに、私ができあがっていく。
「俺も、雛乃といると世界が輝くんだ」
「そうなの?じゃあ、一緒だね」
未だに緊張して、上手く話せているか気になるけど。
この二週間、私の人生はなんだか大きく変わったような、そんな感覚が抜けない。
「俺、好きなんだ」
ぼそっと、でもちゃんと聞こえる声が私の足を止めた。
「……好きって……?」
ドキドキと変な期待をして胸が高鳴る。
そんなわけないのに。
このあとの言葉が、待ち遠しいような、このまま勘違いしていたいような。
どっちつかずの気持ちが体内時計を狂わせる。
「雛乃のこと、好きなんだ。入学式の日からずっと」
まだ学校からそこまで離れていない、歩き慣れた道の真ん中で、山下くんのまっすぐな言葉が飛んでくる。
もうすぐ夏休みが始まる。
そんな空の青い初夏の日だった。
「私も、山下くんのことが……好きです……」
ドキドキしながら、ピタッと止まった汗をそのままに気持ちを返す。
夏の暑さじゃないと確実に言い切れる頬の暑さに、私たちは目を見て笑いあった。
「雛乃、おめでとう」
「えっ……」
一瞬時間が止まった。
後ろにいた、ミルクティーカラーの髪が綺麗な女の子が寂しそうに笑っていた。
思わず、手を伸ばす。
その手に触れたくて、どこにも行ってほしくなくて。
「バイバイ、元気でね」
彼女はそれだけ言って、空気の中に消えていった。
伸ばしても届かなかった手だけが、時間が動き出してもそのままになっていた。
「雛乃、雛乃?」
ポロポロと、涙がこぼれた。
心に大きな穴が空いた感覚が寂しくて。
彼女がどこの誰なのかもわからないのに。
涙が止まらない。
「雛乃、どうした?」
____私、どうして泣いているんだろう。
……そっか、私、山下くんに告白されたんだ。
「嬉しくて。幸せすぎて、涙が止まらないの」
私は笑った。
彼も「なんだよ、それ」と照れくさそうに笑っていた。
正常に動き始めた体内時計は、頬の熱さも夏の暑さも、手から伝わるお互いの温もりも。
しっかりと身体に乗せてくるけど。
そんなことでさえも、幸せだと感じたんだ。
ワクワクした口調で私の肩に触れる。
紗夜ちゃんのほうが楽しそうなのは、彼女はこのあと彼氏とデートだからかな。
「うん。私、大丈夫かな?」
「大丈夫だよ。自信持って行っておいで」
いつも通りの日常。
なにか物足りないけど、その原因はわからないまま、私は紗夜ちゃんに手を振って下駄箱まで急いだ。
「雛乃、おまたせ」
「全然待ってないよ」
憧れていた会話を経て、私たちは二人で学校を出た。
思い出すだけで暴れてしまいそうなハグをしたあの日から、なんだかぐっと距離が縮まったような気がする。
「雛乃はなにが好きなの?」
「え?」
「この前は俺が好きなこと付き合ってもらったから、今日は雛乃が好きなことしたいなって」
好きなことか……。
少し考えてみるけど、記憶がごっそり抜け落ちたみたいに今までなにが楽しかったのか思い出せない。
「よくわかんない……。でも、今こうして過ごす時間は好き」
誰かといると、一人だと見られない景色が見えて。
今まで縁のなかったことに触れられて。
新鮮で、最近は毎日が楽しくて仕方ない。
「そう?」
「うん。紗夜ちゃんといるときとか、山下くんといるときとか。世界がね、キラキラして見えるの」
キラキラしていて、知らない色がたくさんあって。
パズルのピースがどんどんハマっていくみたいに、私ができあがっていく。
「俺も、雛乃といると世界が輝くんだ」
「そうなの?じゃあ、一緒だね」
未だに緊張して、上手く話せているか気になるけど。
この二週間、私の人生はなんだか大きく変わったような、そんな感覚が抜けない。
「俺、好きなんだ」
ぼそっと、でもちゃんと聞こえる声が私の足を止めた。
「……好きって……?」
ドキドキと変な期待をして胸が高鳴る。
そんなわけないのに。
このあとの言葉が、待ち遠しいような、このまま勘違いしていたいような。
どっちつかずの気持ちが体内時計を狂わせる。
「雛乃のこと、好きなんだ。入学式の日からずっと」
まだ学校からそこまで離れていない、歩き慣れた道の真ん中で、山下くんのまっすぐな言葉が飛んでくる。
もうすぐ夏休みが始まる。
そんな空の青い初夏の日だった。
「私も、山下くんのことが……好きです……」
ドキドキしながら、ピタッと止まった汗をそのままに気持ちを返す。
夏の暑さじゃないと確実に言い切れる頬の暑さに、私たちは目を見て笑いあった。
「雛乃、おめでとう」
「えっ……」
一瞬時間が止まった。
後ろにいた、ミルクティーカラーの髪が綺麗な女の子が寂しそうに笑っていた。
思わず、手を伸ばす。
その手に触れたくて、どこにも行ってほしくなくて。
「バイバイ、元気でね」
彼女はそれだけ言って、空気の中に消えていった。
伸ばしても届かなかった手だけが、時間が動き出してもそのままになっていた。
「雛乃、雛乃?」
ポロポロと、涙がこぼれた。
心に大きな穴が空いた感覚が寂しくて。
彼女がどこの誰なのかもわからないのに。
涙が止まらない。
「雛乃、どうした?」
____私、どうして泣いているんだろう。
……そっか、私、山下くんに告白されたんだ。
「嬉しくて。幸せすぎて、涙が止まらないの」
私は笑った。
彼も「なんだよ、それ」と照れくさそうに笑っていた。
正常に動き始めた体内時計は、頬の熱さも夏の暑さも、手から伝わるお互いの温もりも。
しっかりと身体に乗せてくるけど。
そんなことでさえも、幸せだと感じたんだ。


