「雛乃、パス!」
ショッピングモールの隣にあるスポーツ施設で、山下くんにバレーを教えてもらっている。
「パスっ!」
投げたボールは、綺麗な弧を描くことはなく、私と山下くんのちょうど真ん中あたりに着地した。
「あはは!伸びしろあるじゃん!」
「がんばれー!」
コートの外で見守り役に徹している紗夜ちゃんに手を振りながら、山下くんの手元でたくみに操られるボールを目で追いかける。
それもこれも、山下くんがバスケ部だって言っていたから、軽い気持ちでやってみたいと言ってしまったことが始まりだった。
「ボールを投げるときはね、こうやって……」
真横に来て、手元を見せてくれる。
「こう?」
「うん。もうちょっと、こんな感じ」
直接直されることはないものの、声が近い。
心地よい低音が耳を通る。
「それで、ひょいって」
「ひょいっ……」
投げたボールは、綺麗な半径を描くと、すぱっとゴールに入った。
それは当たり前に私のボールじゃなくて、山下くんのボールだけど。
私の投げたボールはさっきよりも遠いけど、軽くて鈍い音を立てて着地した。
「うっ……」
「上手いよ。さっきより飛んでるよ」
スポーツをやる人はポジティブだ。
つられて私もその明るさに引き上げられる。
「もう一回やってみよう。次はきっと大丈夫」
どこか聞き覚えがあるその言葉に、私はそこまで気に留めることなく頷いた。
「うん。やってみる」
取ってきてくれたボールを受け取って、教えてもらったことを思い出して投げた。
投げて、投げて、投げて。入らなくて。
もう何度目かわからなくなってきた。
「これで入らなかったら、帰る」
窓から見える外はもう夕方で、結構ここにいたことを実感する。
「頑張れ。雛乃ならできる」
山下くんに背中を押され、私はボールを投げた。
身体の軸はへなちょこだけど、キレイに飛んだ。
誰もがボールを目で追っているのがみなくてもわかるほど静かで、ゴールの網に触れる音が確実に耳まで届いた。
「……はいった……」
「雛乃!やったじゃん!」
「うん、うんっ!」
ただの遊びなのに、シュートが一本入っただけなのに。
飛び上がってしまいそうになるほど嬉しくて。
その喜びでつい、山下くんにハグをしてしまった。
……いや、ハグされたのか?
興奮していてよくわからないけど、私たちはテンションが上がって抱きしめあっていた。
「あ、ごめん……」
ふと冷静に戻ったとき、喜びは照れに変わり、お互いにじりじりと距離を取った。
ボディタッチよりもレベルが高いことが目の前に広がっていて、その衝撃は計り知れない。
「私も、ごめんなさい」
山下くんの顔は真っ赤で、私もきっと負けじと赤い。
「おふたりさーん、そろそろ帰るよー」
ぶんぶんと手を振っている紗夜ちゃんは、私の頭を優しく撫でて嬉しそうに笑っていた。
その夜送られてきた写真は、つい眺めてしまうような山下くんとのツーショットがたくさんあった。
『ありがとう』
送った一言じゃ足りないくらい、紗夜ちゃんは最高の友達で感謝してもしきれない。
『今度は二人で行こうね』
そんなメッセージに、紗夜ちゃんには見えないのに何度も頷いて『うん』と返した。
こんなに楽しいんだ、友達がいるって。
こんなに幸せなんだ、好きな人がいるって。
そんなことを思いながら、眠りについた。
ショッピングモールの隣にあるスポーツ施設で、山下くんにバレーを教えてもらっている。
「パスっ!」
投げたボールは、綺麗な弧を描くことはなく、私と山下くんのちょうど真ん中あたりに着地した。
「あはは!伸びしろあるじゃん!」
「がんばれー!」
コートの外で見守り役に徹している紗夜ちゃんに手を振りながら、山下くんの手元でたくみに操られるボールを目で追いかける。
それもこれも、山下くんがバスケ部だって言っていたから、軽い気持ちでやってみたいと言ってしまったことが始まりだった。
「ボールを投げるときはね、こうやって……」
真横に来て、手元を見せてくれる。
「こう?」
「うん。もうちょっと、こんな感じ」
直接直されることはないものの、声が近い。
心地よい低音が耳を通る。
「それで、ひょいって」
「ひょいっ……」
投げたボールは、綺麗な半径を描くと、すぱっとゴールに入った。
それは当たり前に私のボールじゃなくて、山下くんのボールだけど。
私の投げたボールはさっきよりも遠いけど、軽くて鈍い音を立てて着地した。
「うっ……」
「上手いよ。さっきより飛んでるよ」
スポーツをやる人はポジティブだ。
つられて私もその明るさに引き上げられる。
「もう一回やってみよう。次はきっと大丈夫」
どこか聞き覚えがあるその言葉に、私はそこまで気に留めることなく頷いた。
「うん。やってみる」
取ってきてくれたボールを受け取って、教えてもらったことを思い出して投げた。
投げて、投げて、投げて。入らなくて。
もう何度目かわからなくなってきた。
「これで入らなかったら、帰る」
窓から見える外はもう夕方で、結構ここにいたことを実感する。
「頑張れ。雛乃ならできる」
山下くんに背中を押され、私はボールを投げた。
身体の軸はへなちょこだけど、キレイに飛んだ。
誰もがボールを目で追っているのがみなくてもわかるほど静かで、ゴールの網に触れる音が確実に耳まで届いた。
「……はいった……」
「雛乃!やったじゃん!」
「うん、うんっ!」
ただの遊びなのに、シュートが一本入っただけなのに。
飛び上がってしまいそうになるほど嬉しくて。
その喜びでつい、山下くんにハグをしてしまった。
……いや、ハグされたのか?
興奮していてよくわからないけど、私たちはテンションが上がって抱きしめあっていた。
「あ、ごめん……」
ふと冷静に戻ったとき、喜びは照れに変わり、お互いにじりじりと距離を取った。
ボディタッチよりもレベルが高いことが目の前に広がっていて、その衝撃は計り知れない。
「私も、ごめんなさい」
山下くんの顔は真っ赤で、私もきっと負けじと赤い。
「おふたりさーん、そろそろ帰るよー」
ぶんぶんと手を振っている紗夜ちゃんは、私の頭を優しく撫でて嬉しそうに笑っていた。
その夜送られてきた写真は、つい眺めてしまうような山下くんとのツーショットがたくさんあった。
『ありがとう』
送った一言じゃ足りないくらい、紗夜ちゃんは最高の友達で感謝してもしきれない。
『今度は二人で行こうね』
そんなメッセージに、紗夜ちゃんには見えないのに何度も頷いて『うん』と返した。
こんなに楽しいんだ、友達がいるって。
こんなに幸せなんだ、好きな人がいるって。
そんなことを思いながら、眠りについた。


