映画館で公開されたばかりの恋愛映画を見て、カフェでお昼ご飯。
ほとんど紗夜ちゃんとしか話していないから、そろそろ突っ込まれるだろうなって思っていた。
「せっかく可愛くしてきたんだし、いっちゃんとも話さないともったいないよ?」
トイレで手を洗いながら、心配そうにこちらを見ている。
「そうだよね」
そうだよ。これは紗夜ちゃんが私の恋の背中を押すために仕組んでくれているものなんだから。
頑張らないとだよね。
「ボディタッチ、やってみようかな……」
紗夜ちゃんが大丈夫だったんだ。
それならきっと、大丈夫だよね。
あの子も、応援してくれてる……。
……あの子、名前ってなんだっけ。
まぶたの裏に後ろ姿が浮かぶのに。振り向いたその顔は、クレヨンで塗りつぶされたようにぐるぐると黒塗りになっている。
ねぇ、あなたは誰?
手を伸ばしても、届かなくて。
私はあなたのことが思い出せない。
「ひなちゃん、ひなちゃん?」
とんとん、と肩を叩かれる。
「なに?」
「大丈夫?息荒いけど……」
「うん。戻ろ?」
嫌な可能性が頭に浮かんだ。
……もしかして、私は……。
完全に考える前に、首を振ってなかったことにした。
だってちゃんと記憶にある。
あなたと話したこと。
出会ったときのこと。
鮮明に思い出せるのに。
顔と名前だけが、全然思い出せない。
でも、大丈夫だよね……?
今は他のことで頭がいっぱいで忘れてるだけで、絶対に思い出せるんだから。
そうに決まってる。
ほとんど紗夜ちゃんとしか話していないから、そろそろ突っ込まれるだろうなって思っていた。
「せっかく可愛くしてきたんだし、いっちゃんとも話さないともったいないよ?」
トイレで手を洗いながら、心配そうにこちらを見ている。
「そうだよね」
そうだよ。これは紗夜ちゃんが私の恋の背中を押すために仕組んでくれているものなんだから。
頑張らないとだよね。
「ボディタッチ、やってみようかな……」
紗夜ちゃんが大丈夫だったんだ。
それならきっと、大丈夫だよね。
あの子も、応援してくれてる……。
……あの子、名前ってなんだっけ。
まぶたの裏に後ろ姿が浮かぶのに。振り向いたその顔は、クレヨンで塗りつぶされたようにぐるぐると黒塗りになっている。
ねぇ、あなたは誰?
手を伸ばしても、届かなくて。
私はあなたのことが思い出せない。
「ひなちゃん、ひなちゃん?」
とんとん、と肩を叩かれる。
「なに?」
「大丈夫?息荒いけど……」
「うん。戻ろ?」
嫌な可能性が頭に浮かんだ。
……もしかして、私は……。
完全に考える前に、首を振ってなかったことにした。
だってちゃんと記憶にある。
あなたと話したこと。
出会ったときのこと。
鮮明に思い出せるのに。
顔と名前だけが、全然思い出せない。
でも、大丈夫だよね……?
今は他のことで頭がいっぱいで忘れてるだけで、絶対に思い出せるんだから。
そうに決まってる。


