「わたしもまぜて!」
幼稚園の外遊びの時間。
砂場でトンネルを作る同じピンク色のスモッグを着た女の子に声をかけた。
青いスモッグを着た男の子も一緒で、ぼやけて見えないチューリップの名札を胸元に付けていた。
「いいよ!いまね、でんしゃがとおるみちをつくってるの」
砂まみれの手でまだ手を付け始めたばかりの山の麓を指さして自慢げに話す彼は、子どもらしいキラキラした目をしていた。
「ひなのちゃんは、ここからほってね」
「わかった!」
彼からの指示で山を掘り始める前に、女の子の肩に砂がついているのに気がついた。
「ねぇ、おすなついてるよ」
私が彼女の肩に触れると、思い切りその手を跳ね除けられた。
何が起きたのか分からなくて、ただ尻もちをついてこちらを向いて立ち上がる彼女を見つめることしかできなかった。
「やめて!さわらないで!きもちわるいっ!」
想像もしていなかった出来事に、幼い私は理解が追いつかなかった。
なんで私、今尻もちをついてるんだろう。
なんで、砂をはらおうとしただけなのに彼女は泣いているんだろう。
なんで先生は、彼女の肩をさすっても何も言われないの?
「こら!雛乃ちゃん何してるの!」
「えっ……」
「いじわるしちゃダメでしょ?」
いじわるなんて、してないよ。
私はただ、ただ……。
「なにもしてないもん……」
「なにもしてないのに、カナちゃんが泣くわけないでしょう?」
強い先生の口調。
耳に残るカナちゃんとやらの泣き声。
……そっか、私は人に触れたらその子を不幸にするんだ。
子どもながらに、私はそう知ってしまった。
触らないで!
気持ち悪い!
頭の中で幾度となくリピートするカナちゃんの声が、私を苦しめる。
苦しい。苦しい苦しい。
どんどん黒い渦の中に巻き込まれていく。
やだ、やだよ。怖いよ。
その恐怖から逃げ出したくて、私は幼稚園を抜け出して走った。
いきなり雲行きが怪しくなって、ポツポツと雨が降り出したこともそっちのけで。
短い足で、いつもお母さんと歩く道を必死に走った。
「どうしたの?」
神社でうずくまっていると、同じくらいの小さい女の子がしゃがんで私に声をかけた。
「やなこと、あったの」
「そっか。きいたげるから、はなしてごらん?」
同い年くらいのはずなのに、彼女はやけに大人びて見えた。
「あのね……」
実に子どもらしい、そんな話し方で。
子どもらしい悩みを彼女にしゃくりあげながらぶつけた。
「そんなの、ひなのちゃんはわるくないじゃん」
そのときに、ちゃんとここにいていいと言われた気がした。
私は彼女にまるっと全部救われたんだ。
「ねぇ、わたしのともだちになってくれる……?」
「うん。ともだちだよ」
彼女はにこっと笑って、サラサラの髪を風に揺らした。
「雛乃!なにしてるの!」
バタバタと足音を立てて、傘をさしたお母さんが神社に入ってきた。
「お友達に意地悪して幼稚園から逃げ出すなんて……。それに、こんなところに一人でいたら危ないでしょ!」
ピシャッと雷が光るように怒られる。
「ひとりじゃないもん」
「何言ってるの!早く帰るよ」
そう、抱き上げられた。
ばいばい。そう手を振る彼女に私も小さく手を振り返した。
幼稚園の外遊びの時間。
砂場でトンネルを作る同じピンク色のスモッグを着た女の子に声をかけた。
青いスモッグを着た男の子も一緒で、ぼやけて見えないチューリップの名札を胸元に付けていた。
「いいよ!いまね、でんしゃがとおるみちをつくってるの」
砂まみれの手でまだ手を付け始めたばかりの山の麓を指さして自慢げに話す彼は、子どもらしいキラキラした目をしていた。
「ひなのちゃんは、ここからほってね」
「わかった!」
彼からの指示で山を掘り始める前に、女の子の肩に砂がついているのに気がついた。
「ねぇ、おすなついてるよ」
私が彼女の肩に触れると、思い切りその手を跳ね除けられた。
何が起きたのか分からなくて、ただ尻もちをついてこちらを向いて立ち上がる彼女を見つめることしかできなかった。
「やめて!さわらないで!きもちわるいっ!」
想像もしていなかった出来事に、幼い私は理解が追いつかなかった。
なんで私、今尻もちをついてるんだろう。
なんで、砂をはらおうとしただけなのに彼女は泣いているんだろう。
なんで先生は、彼女の肩をさすっても何も言われないの?
「こら!雛乃ちゃん何してるの!」
「えっ……」
「いじわるしちゃダメでしょ?」
いじわるなんて、してないよ。
私はただ、ただ……。
「なにもしてないもん……」
「なにもしてないのに、カナちゃんが泣くわけないでしょう?」
強い先生の口調。
耳に残るカナちゃんとやらの泣き声。
……そっか、私は人に触れたらその子を不幸にするんだ。
子どもながらに、私はそう知ってしまった。
触らないで!
気持ち悪い!
頭の中で幾度となくリピートするカナちゃんの声が、私を苦しめる。
苦しい。苦しい苦しい。
どんどん黒い渦の中に巻き込まれていく。
やだ、やだよ。怖いよ。
その恐怖から逃げ出したくて、私は幼稚園を抜け出して走った。
いきなり雲行きが怪しくなって、ポツポツと雨が降り出したこともそっちのけで。
短い足で、いつもお母さんと歩く道を必死に走った。
「どうしたの?」
神社でうずくまっていると、同じくらいの小さい女の子がしゃがんで私に声をかけた。
「やなこと、あったの」
「そっか。きいたげるから、はなしてごらん?」
同い年くらいのはずなのに、彼女はやけに大人びて見えた。
「あのね……」
実に子どもらしい、そんな話し方で。
子どもらしい悩みを彼女にしゃくりあげながらぶつけた。
「そんなの、ひなのちゃんはわるくないじゃん」
そのときに、ちゃんとここにいていいと言われた気がした。
私は彼女にまるっと全部救われたんだ。
「ねぇ、わたしのともだちになってくれる……?」
「うん。ともだちだよ」
彼女はにこっと笑って、サラサラの髪を風に揺らした。
「雛乃!なにしてるの!」
バタバタと足音を立てて、傘をさしたお母さんが神社に入ってきた。
「お友達に意地悪して幼稚園から逃げ出すなんて……。それに、こんなところに一人でいたら危ないでしょ!」
ピシャッと雷が光るように怒られる。
「ひとりじゃないもん」
「何言ってるの!早く帰るよ」
そう、抱き上げられた。
ばいばい。そう手を振る彼女に私も小さく手を振り返した。


