大学生、夏、ザリガニを釣りに行く


今の私たちはザリガニを飼育しようとは思わない。私はさきいかごと釣り糸から切り離し、ザリガニを解放した。ぽちゃん、と小さな水飛沫を上げて元いた場所に戻ると、爪から離さなかったそれを懸命に貪っていた。多めのさきいかは、休暇に彩りを添えてくれたことへの餞別だ。



「どう?他にもいる?」



尋ねると、皆各々ザリガニを発見していた。

一番乗り気な感じを見せていなかったB君でさえ、はしゃぐようにしてザリガニを釣り上げている。



「写真撮って」



と言って、私に携帯を差し出してきた。つい笑いがこぼれる。何だかんだ、色々文句を垂れつつも興味があったらしい。



Nちゃんでさえも釣り上げている。決して大声では無い悲鳴を上げ、腕を伸ばして自身との距離を開けている。けれど、表情は笑顔で満ちていた。釣り好きのA君も勿論そうだし、Dさんだって。

一方、他にもメンバーを募ろうとするほど楽しみにしていたはずのC君は、誰よりも1番早く飽きて地面に落ちている形のいい木の棒を探して遊んでいた。おい。





帰り道、私は行きとは異なり最後尾を走っていた。湿気に満ちた8月の空気を、生ぬるい風を浴びながら胸いっぱいに吸い込む。

小さな旅をしているみたいだった。学部も、出身地も、生い立ちも、何もかもが違う人間がたまたまこうして同じ土地に集まり、”夏”を探しに行く。

間違いなく、夕方に傾いた赤い太陽に向かって皆で自転車を走らせたこの描写は、人生というアルバムにおいて沢山の写真と共に大きな面積を占めるだろう。そんな予感がした。