「いいんですよ。俺が勝手に好きなだけなんで」
「でも……」

 笑って俺が再びフォークを持つと、先輩も顔を上げる。

「わかってますから。まだセイ先輩のこと好きなのは」

 今はこれ以上現実を見たくなくて先輩もケーキを食べるように促すと、先輩もやっとフォークを手にした。

「ひろにぃのオススメはチーズケーキなんですよ!」

 食べながら笑い掛けて話題を変えると、先輩もケーキを口にして困ったように笑う。

「そういうのは先に教えてよ」
「だって最初は好きなの食べて欲しいじゃないですか」
「もー、めちゃくちゃ迷っちゃったじゃない」
「それも楽しいでしょう?」

 無理矢理だったかもしれない。
 でも、今はただこの時間を楽しんで欲しかった。

 セイ先輩と三木先輩が居るのを見かける度に辛そうな顔をする先輩。
 なのに二人の前ではしれっとしている先輩を見る度に俺だって諦めきれず、こっちを向けばいいのに!と思い続けてきた。
 他の男を好きな先輩を好きで居続けるなんて不毛なのかもしれない。
 でも、そんな簡単に切り替えられるのなら……最初からこんなにも好きになっていない。
 わかっているのに好きだから困るんだ。
 お互い辛い恋。

「いちごのサンタも表情違うんだね!」

 笑う先輩の皿を見て、ハートの目の先輩のサンタとニコニコ笑う俺のサンタを見る。

「俺からサービス!」

 ひろにぃがフルーツのいっぱい入ったゼリーをくれて先輩はまた嬉しそうに笑った。