俺はザッハトルテ。
 上の生チョコ部分に金が散らしてあるシンプルなケーキで、皿に盛られたそれにはクリスマスだからかいちごとクリームで作ったサンタまで飾られている。
 先輩もフルーツいっぱいのケーキを前にして嬉しそうだ。
 こんなに嬉しそうな姿はなかなか見られない気がする。

「おいしっ!!」

 写真を撮ってから口に運んだ先輩は思いっきり顔を綻ばせた。
 そんなかわいい姿……

「俺のも食べます?」
「いいの?」
「どうぞ」

 どれだけでもケーキを食べさせてあげたくなる。

「どっちもおいしい!もうこれは他のも食べてみたいね!」

 感動したように目をキラキラさせてケーキを堪能する先輩。

「じゃあ、また一緒に来てくれますか?」
「うんっ!!」

 まぁ、完全にケーキのお陰だが、これはこれでよしとした。
 こんな素直で無邪気な先輩はかなりのレアだから。

「……にしても、さすがクリスマス。みんなカップルだねぇ。もしかしたら、私たちもカップルに見えるのかな?」

 紅茶も香りを楽しんでからゆっくり口にして微笑む先輩。

「どうですかねぇ?まぁ、でも……カップルに見えるなら俺は嬉しいですが?」

 少し攻めてみると、先輩はカップを置いてこっちを見た。

「……まだ好きで居てくれたの?」
「迷惑ですか?」

 俺もフォークを置いて見つめ返す。

「……正直嬉しい。でも……申し訳ない」

 先輩は両手を膝に置いて俯いてしまった。