力也に今日は一緒に帰れないことを伝えたら、力也とヒサとクロが手伝ってくれて、むしろ、

「こっちはやっとくからはよ行けっ!」

 俺は部室を追い出された。
 ジャージにコートとマフラーなのは少しカッコがつかない気もする。
 でも、今日を逃したら菊川先輩と二人でなんてなかなかない気もした。

「お待たせしました」

 部室棟から出るとすぐに菊川先輩が居て走り寄る。

「いいけど……どこ行くかお店って決めてるの?」

 寄り掛かっていた壁から体を起こして先輩はこっちを見上げた。

「はい!俺の知り合いの店ですがいいですか?」
「むしろ、ケーキは普段買わなくてわからないから……任せる」
「じゃあ、行きましょうか!」

 先輩と並んで歩くだけでドキドキする。
 まだ駐輪場に向かっているだけなのに。

「吉井くん」
「は、はいっ!」
「私の自転車、ここなんだけど」

 言われてハッとする。
 学年毎で場所が違うのだから当たり前なのに。

「じゃあ、俺もすぐ持って来ます!」

 一年はまだ奥の場所で、俺は自転車まで走った。
 チラッとセイ先輩だったら同じ場所で離れることはないのに……なんて思ってしまう。
 でも、今はそんなことよりも少しでも早く先輩と出掛けたかった。