次の日が部活とかハードな気もする。
 まぁ、クリスマスの浮かれムードは多少マシになる気はするが。

「男バスはこれから?」

 珍しく菊川先輩が一人で歩いていて、声を掛けられた俺は咄嗟に周りを見てしまった。

「今日はミキは休みよ!」
「え?」
「びっくりしなくても……親戚とかで集まっててミキは毎年休むの!」

 荷物を胸元に抱える菊川先輩。だが、

「まぁ、今年は小嶋くんと過ごすかとも思ったけどね」

 少し伏せた目は何を見ているのか。

「……先輩は昨日ケーキ食べました?」

 話題を変えると先輩はフルフルと首を横に振る。

「甘いの嫌いですか?」
「違うの。うちのお母さんが生クリーム苦手だからうちはケーキは食べないのよ」
「先輩が嫌いではなくて?」
「むしろ、好きよ!」

 昨日はあんなモヤついたのに、“ケーキが”とはわかりつつも嬉しくなる単純な自分。

「今日はこのまま帰っちゃいます?」
「ううん、少し女バスの部室を大掃除してく!帰っても両親は仕事だし、姉も彼氏とデートだし、弟も部活行ってるから」
「じゃあ!」

 ため息を吐いた先輩に笑いかける。

「俺とケーキ食べに行きません?」
「男バスが終わるまで待ってろってこと?」
「あ、ダメ……ですよね」
「……いいわよ」

 こういう不意の笑みはズルい。
 了承してくれた嬉しさと、やっぱり“好き”を実感して俺の胸はドキドキし続けていた。