結局、試合には勝ったのに俺はどうしても悔しさが残っていて喜べない。
 真正面から来て身長差だけでなく、跳んだのに躱されたことのショック。
 今は現役ではない俺と現役プレイヤーであるセイ先輩の違いかもしれない。
 でも、十六センチも差があるセイ先輩には負けたくなかった。
 バスケまで負けたら……俺にはもう何もない気がして。

「何、ロシアンルーレット回避したのにテンション低くね?」

 洋食屋に移動して自転車から降りた力也に肩を叩かれても何も言えない。

「楽しかっただろ?」
「それは……まぁな」
「ならいいじゃん?次はうまい飯だぞ?腹減ったじゃん!」

 明るい力也を見て気を遣わせていることに申し訳なく思った。
 それこそ力也みたいに誰とでも気軽に話せて、気が利く男なら彼女だってすぐできそうなのに。

「マジ、俺タバスコ入り当たったらどーしよー!!」
「動画撮っててやるからなっ!」

 アワアワしているヒサにニヤリと笑う力也。

「腹減ったし、早く行こうぜ」

 アキに急かされて俺たちは先輩たちに続いて店に入る。
 温かい雰囲気の店内はレジの横に小さなツリーがあるだけでクリスマスらしさはあまりなかった。

「来たな。寂しい独り身野郎ども」
「佑樹もな!」

 先輩たちとみんなで過ごすクリスマスも悪くない。
 確かにそう思える空間ではある。
 でも、チラッとセイ先輩が三木先輩とメッセージのやり取りをしているのが見えてやるせなくなった。