“フリ”というのが納得なほど今まで通りのセイ先輩と三木先輩。
 別に一緒に居ることもない。
 ただ、たまに三木先輩が笑いながら手を振ることはあったが、セイ先輩はわかりやすいくらいに背を向けて頭を抱えていた。
 その度に辛そうな顔をする菊川先輩。
 そんな先輩をただ見ていることしかできなくて、俺ももどかしい日々を送っていた。
 新体操をしないか誘っても、

「寒いと軋むから無理」

 と断られて、それは俺もだから静かに引き下がるのみ。
 十二月になって更に周りはどんどんクリスマスムードを漂わせてくると、菊川先輩のため息は増えていった。
 なのに、三木先輩とはいつも通り一緒に居て、そんな先輩が痛々しくも見える。

「菊川先輩、傷心だろ?むしろ、クリスマスはヨッシーが誘ったら?」

 何も知らないヒサに言われて、曖昧に笑うことしかできない。
 文化祭の日にフラれたことは伝えたが、ヒサにはいい雰囲気だとちょいちょいプッシュされていた。
 結構壁を作られてサラッと躱されているのに。
 昨日は遂に、

「吉井くんも諦め悪いよねぇ?……ま、私もだけどさ」
「そう思うならもう俺にすればいいのに」
「できないことわかるでしょ?」

 思いっきり眉を寄せたまま笑われたのに?

「……先輩は俺は見てくれないんだよ」

 押し出した声がやけに重く響いた気がした。