「ねぇ、小嶋、恋だの何だの……する気ある?」 

 考えているうちに話が進んでいたらしく、聞こえてきた三木先輩の声でハッとする。

「ない」

 セイ先輩は迷うことなく答えた。
 ない?恋をする気さえ?

「でしょ?元々一緒になること多いんだからさ!彼女ってことにしといてくれるだけでいいのよ」

 それを驚くこともなく三木先輩もサラサラと話を進める。

「あ!もし好きな人ができたらそれはすぐ終わりでいいよ!」

 セイ先輩と三木先輩が同中だとは聞いていた。
 中学時代もキャプテン同士だと。
 だが、二人は本当にそれだけだとは思えないくらい距離とかも近かったのに……二人には恋愛感情はない?

「ミキ、小嶋くんの迷惑も考えて……」
「だってたまに帰り一緒だったりするでしよ?今までも何度か小嶋と付き合ってるのかって聞かれてたんだよ?そう思ってる人も一定数居るならもうよくない?」

 菊川先輩が言葉を挟んでも三木先輩はにっこりと笑う。
 菊川先輩の複雑そうな顔は見ていられない。
 でも、セイ先輩がこれをきっかけに三木先輩とくっついてくれたら……表面上だけでもカップルになって周りに認知されたら……何か変わるのだろうか?

「まぁ、二人はお似合いだとは思ってたし……確かにそう思ってる人も多いからねぇ!小嶋くん!それなら今からミキを病院連れて行くのもよろしくね!」

 また聞いていなかった間ににこっと笑って菊川先輩がセイ先輩の背中を叩く。
 そんな悲しそうな顔で……俺はグッと握った拳に力を入れた。