何事かと出ていこうかとも思った。だが、

「こういう時って助けてくれるもんじゃないのー?」

 三木先輩が手すりから離れて腰に手を当てて階段の反対側に歩いて行く。

「何で俺が?関係ないだろ?」

 そこに居たのはセイ先輩だった。

「薄情者〜」
「何とでも言え」

 その会話だけでは何があったのかはわからないが、不意に三木先輩がセイ先輩の左腕を掴む。

「……ねぇ、小嶋って私に興味ないよね?」
「は?」
「だから、付き合わない?私たち」

 驚きのあまり声を出しかけて何とか留まった。
 どういうことだ?
 興味はない?だから、付き合う?……ん?

「な、何言ってるの!?」

 固まっているセイ先輩より先に慌てて口を開いたのは菊川先輩。

「彼氏のフリだよ!『彼氏居る』って言えたら解決じゃん!それに小嶋なら面倒くさがって連絡とか束縛もないだろうし、お互い生活変わんないでしょ?」
「いや、でもね!」

 名案のように笑顔で話す三木先輩の腕を菊川先輩が掴んだ。

「小嶋だっていいよね?女の子に告られたり面倒なんでしょ?付き合ってることにすればそれがなくなる訳だし!」

 三木先輩は腕を菊川先輩に掴まれたままセイ先輩に笑顔を向ける。
 どう見たって眉を寄せている菊川先輩。
 先輩はあそこで今、どんな気持ちで居るのか。

「フザけてるのか?」
「違う!あぁやってキクまで怖い目に遭わせたくないの!」

 怖い目?
 何があったかわからないのがもどかしい。