結局、三木先輩は第三に少しベンチに下がっただけで、ほとんど試合には出たのに二点差で負けた。

「負けちゃったなぁ……でも、次の試合も見てくだろ?」
「何で?」
「中学一緒だった木村が出るらしい」
「……へぇ」

 言われても同中の女バスには興味はないし、名前を聞いたって顔さえ朧げで出て来ない。
 力也はこまめに同中の奴らとも連絡を取っているらしいが、俺は関わる気もなかった。
 むしろ、女バス連中は中学の時も俺がマネをやることを少しバカにしてくることもあって忘れたいくらいだから。

「ちょっと歩いてくる」

 菊川先輩たちがコートから去るのを見て、俺も立ち上がる。
 力也に「いってら〜」と軽く手を振られて俺は席を離れた。
 二階席の一番上からコートを見つめる。
 三面取っても余裕のあるコートと輝いて見える選手たち。
 俺はそのベンチに入ることはあるかもしれないが、あのコートには立てない。
 もう腐ることはないが、やっぱり羨ましくは思ってしまう。
 県大会の大舞台……どころか俺は一年で出た中学の市大会しか経験がないから。
 このままでは負のループに陥りそうで、コートに背を向けた。
 そうなるくらいならちょっと菊川先輩でも探して気分を変えた方がいい。
 歩いて行くと、階段で話している三木先輩と菊川先輩を見つけた。
 青いジャージの男も居てトラブっているように見える。だが、

「っくそ」

 三木先輩に何かを言われたらしく、男は俺にもぶつかりつつ走って行った。