ヒヤッとするその事態にコートの外からも心配の声があがる。
 それでもセイ先輩はサッと立ってすぐにコートに戻った。

「大丈夫かよ」
「あぁ、いいから!いくぞっ!!」

 心配そうなトモ先輩にも笑ってその腰を叩く。
 思いっきり飛ばされて床に強打していたんだからぶつけた腰は痛いはずなのに、それでも仲間を鼓舞して引っ張る姿はカッコよかった。



 十六点差。
 一年をほとんど出すこともなく攻め続けたし、かなり食らいついたと思う。
 試合後は外で先生の周りに集まって、少し話すだけですぐ解散になった。
 なぜなら月曜日はテストだ。
 試合に負けたということはテストに全力を注ぐべきではある。
 まだ勝ち進んでいる女子の試合は気になるが、「すぐ帰って体を少しでも休めてテストに集中」と言われたら見に行くわけにもいかない。
 ダイ先輩はトモ先輩に何かを話して体育館へと歩いて行ったが、俺たちは素直に帰ることにした。

「いいのか?」
「いいも何も……帰れって言われたし」

 力也にこそっと聞かれたが、彼氏でもなく……しかも、一応振られている俺はそこまででしゃばることもできない。
 俯いているトモ先輩にセイ先輩が何か話し掛けているが、とりあえず俺たち一年は帰ることにした。

「セイ先輩は女バスを見に行くかもなのに?」
「それを俺がどうこうはできないだろ?」
「切ないな」

 力也とヒサに背中を叩かれて歩く。
 セイ先輩が三木先輩と付き合えばまだ状況は変わるのだろうか?