「……で?今度はどーしたんだよ?」

 教室でため息を吐いた俺は力也に後頭部を突付かれて顔を向ける。

「数学わかんねぇの?」

 広げてあった教科書を見て聞かれて、俺は黙り込んだ。
 それもある。
 だが、それ以上にモヤモヤしてしまって勉強どころではない。

「……菊川先輩にはフラれたけど諦めないんじゃなかったのか?」

 相変わらず俺の思考を読んだらしい力也は俺の前の席に腰を降ろしてこっちを見た。
 文化祭後、一緒に帰る時にフラれたことは伝えたが本当力也には隠し事はできないと思う。
 普段何も考えていないように見えるのに人一倍人の変化には敏感だから。

「諦めないけど……勝てるとも思えない」
「は?」

 ボソッと零すと、力也は俺の机に頬杖を付く。

「だってセイ先輩だぞ!?勝てるとこなんてあるか!?」

 開き直ると、力也は少し考えた。

「うーん……背が高い?」
「菊川先輩とだと俺、三十五cmも高いんだそ?セイ先輩との方がバランス良く見えるだろ」
「確かになぁ」

 普通なら武器かもしれないが小さな先輩とだとそれも弱点な気がしてしまうから怖い。

「でもさぁ、流星ともいい感じに見えるけどな?」
「だから、同じマネとして……後輩育成してくれてるだけなんだって」

 自分で言っていて虚しくなる。

「ならそのマネ同士ってのをフル活用しろって!話して距離詰めてくしかないだろ?」

 それがうまくいくならこんなに悩んではいない。