一回戦、第三クォーターからは女バスがギャラリーに居ることに気付いた。
 菊川先輩がずっとセイ先輩を目で追っていることも。
 わかってはいるのにやっぱりショックなのは菊川先輩のことが俺も諦められないからだろうか。
 セイ先輩がドリブルで相手を躱す。
 ピンポイントでパスを通す。
 パスカットをして無駄のないレイアップを決める。
 声を出してチームを動かす一つ一つ、そのどれもがカッコ良くて敵わないと思ってしまう。
 モヤモヤしながら必死にスコアをつけている間に試合は終わって、挨拶を終えた先輩たちがベンチに戻ってきた。

「っしゃ!やったな!」

 試合にも出た力也は嬉しそうにハイタッチをしてくる。

「早くベンチ空けて外で一回集合するぞ!誰の荷物でもいいからまずは持って外に出ろよ!」

 セイ先輩は試合が終わってもカッコ良いとか……もう俺はどうしたらいいのかわからない。

「流星?」

 力也に呼ばれて慌てて俺もスコアブックを胸に抱える。
 菊川先輩に教えてもらったお陰でオフィシャルにスコアの確認に行った時も間違いもなくスムーズにできたけど……。
 ギャラリーに目を向けると、三木先輩と笑っている菊川先輩。
 セイ先輩に声をかけているのは見えるがこっちとは目も合わない。

「……キッツ」
「ん?水筒持ってやろっか?」

 力也の気遣いも今の俺には少し辛かった。