「三分前です」

 主審の笛が鳴って練習を中断すると、俺たちはそのまま先生の周りに集まった。

「小嶋、秋元(あきもと)下野(しもの)、花城、長谷(はせ)……最初からいけよ」
「「「「「はいっ!!」」」」」

 ニッと笑われて先輩たちが声をあげる。
 Tシャツを脱いでユニフォーム姿になった先輩たちはオフィシャルの前で並んでから、揃って頭を下げてコートに入った。
 新チームの初戦。
 俺は試合には出ないのに変に落ち着かない。
 挨拶をして中央のサークルに足を踏み入れるコタ先輩を見ながら、俺はもう何度目かのスコアシートをチェックした。
 主審が真っ直ぐ上げたボール。
 コタ先輩はきっちりトモ先輩の方に弾いたが、キャッチしきれなくてボールは相手に取られた。

「悪ぃっ!」

 マークマンを追いかけながら回り込んでグッと腰を落とすトモ先輩。

「セイっ!」

 走り込んだセイ先輩のマークマンの方へボールが渡ると、セイ先輩はボールをトレースしながら目を細めた。
 フェイクも慎重に見極めつつ進路を塞いで手を伸ばすと、バチンと音をさせてボールを弾く。
 走り出したトモ先輩とパスを繰り返してゴール下まで突っ走った。
 セイ先輩のレイアップで先制するとハイタッチしてボールを見ながらハーフラインまで戻る。
 俺がマネとして公式戦初の得点を記録するのはセイ先輩の“四”。

「声出して行くぞ!」
「うっしゃぁっ!!」

 叫びながら腰を落として、先輩たちはただ走った。