力也とヒサとクロの四人で適度に回って、ふとした時に漏れてしまうため息。

「俺らとじゃ不満かよ?」

 パシャンと水音と共に頭に軽い衝撃を感じて振り返ると、力也は水風船をまたこっちに向けてぶつけてきた。

「そんなこと言ってない」
「顔に書いてんだよ。さっきから焼きそばもたこ焼きも買っただけで食わねぇし」

 目を向けられたのは俺の手にぶら下がっている袋。

「完売して片付けは後でって言ってたのに菊川先輩は残ってたもんな?」

 いつの間に買ったのかヒサもチョコバナナを咥えて顔を出す。

「持ってって一緒に食べたら?」

 クロは唐揚げのカップを俺の袋に入れて笑った。

「え?」
「行ってぶつかって来いよ!文化祭だぞ?」

 ニッと笑って力也は俺の背中を押す。

「お前らなぁ……」
「「フラれたら慰めてやんよっ!!」」

 力也とヒサがハモって、クロが反応に困っている姿に笑ってしまった。
 クルッと向きを変えて化学室へと走る。


 菊川先輩がセイ先輩を好きなのは知っている。
 今日だけでも嫌というほど実感した。
 でも、その恋は実らなさそうなのも見てしまったから。
 夏休み中も準備の間も……いつも言い合いつつ笑い合っていたセイ先輩と三木先輩。
 あの二人の間に流れる空気、遠慮のない会話、自然なやり取り……全てが入り込む余地は見出だせない。
 そんなの、ずっとセイ先輩と三木先輩を見てきた菊川先輩はもっと実感しているだろう。