今、何て言った？
　はっきりフッて……そう聞こえたが？
　俯く菊川先輩から視線を彷徨わせてハナ先輩と目を合わせるセイ先輩。

「わかってんなら終わりだろ？フラれた！はい、終了！それよりこの皿いっぱいになるけど？あとどーすんだよ」

　ハナ先輩が面倒くさそうに手をプラプラと振る。

「ハナ……」

　セイ先輩は何かを言いかけたのにすぐに言い淀んだ。すると、

「花城(はなき)さぁ……自分は《《彼女居る》》からって余……」

　菊川先輩がパッと顔を上げて言いかけたところで、ハナ先輩が菊川先輩の口にバチンと音がするほど勢いよく手を押し付ける。
　あれ？この二人も意外と近い関係なのか？
　胸に軽いザワつきを覚えつつ、でも、“ハナ先輩は彼女が居る”それを信じることにする。
　板に顔を押し付けてはぁ、とため息を吐くと、

「ね〜ぇ！小嶋、居るー？」

　三木先輩の声が聞こえて俺の前を通り抜ける気配がした。そして、

「あのさぁっ！」

　走ってセイ先輩の真横に並んだ三木先輩にセイ先輩がフライ返しを突き付ける。

「俺は今、忙しいんだよ！」
「うん！だから、後はキクが焼いてくれるから代わって！」
「は？」

　そのまま手からフライ返しを取って三木先輩はそれを菊川先輩に渡した。
　そして、そのままセイ先輩の腕を引いて走り出す。
　他のメンバーの間を縫うように走って行く二人の背中を見つめてから調理してる菊川先輩の方に目を向けると、先輩は深いため息を吐いていた。