手渡されたボール(バトン)
 セイ先輩は前を向いて目の前のハンド部を追って足を踏み出す。
 まだすぐに他もバトンを繋ぐのほどの混戦。
 だが、セイ先輩はカーブを曲がり切ってそのままハンド部と並ぶ。

「「「セーーーイっっ!!」」」
「「「セイ先ぱーいっ!!」」」

 先輩たちも俺たち一年も必死に叫んだ。
 体格だってセイ先輩より一回り以上大きなハンド部キャプテンを追って歯を食い縛るセイ先輩。
 左脇にあるボールを抱えて右腕は思いっきり振った。
 汗と首元のハチマキにある石を共に光らせながらゴールテープに向かって突っ込む。

「ゴーーールっ!!ほぼ同時に飛び込みました!三位は陸上部、サッカー部と続きます」

 こんな間近で見ていても判断できぬほどの接戦。
 しかも、すぐ後に他もゴールに飛び込んできたほどどの部も混戦の決勝だった。

 トラックの中ではトモ先輩が跳びついてセイ先輩がボールをその頭にぶつけている。

「順位は只今確認中なので少々お待ち下さいっ!」

 まだ興奮気味の声がマイクの音割れを起こしながら聞こえた。そして、

「……発表します!」

 しばらくした後、マイクの声でざわめきは一瞬にして静まる。

「判定の結果……一位は……」

 変なタメとか要らないのにマイクを握った男は手元の紙を確認してからパッと顔を前に向けた。