「おい」

 力也に肘で突付かれても反応できない。
 俺は今、目の前で起こったことを理解したくなかった。
 セイ先輩は三木先輩に彼氏ができても関係ない?
 好きなんじゃないのか?
 むしろ、二人は両想いなんじゃ?
 しかも……菊川先輩は今、告っ……た……?
 頭の中がパニックでうまく考えることもできない。

「流星!」

 バチンと背中を叩かれて、じんと広がる痛みでやっと顔を力也の方に向けられるだけだった。

「顔、死んでる」
「……マジで死にたい」

 ボソッと零すと、力也に腕を回して肩を組まれる。

「セイ先輩の顔見てねぇのか?」

 言われてそろりと先輩の方を向いた。
 いつも通りの先輩にしか見えないが、力也は何が言いたいのか?

「困ったってか、むしろ、迷惑そうな顔してんだろ?」
「……どこが?」
「そこはちゃんと見てろよ。……とにかく二人はまだ付き合ってない!なのに、諦めんのか?」

 あまりにも力也が真剣な顔をしていて反応に困る。

「まぁでも、近いうちにセイ先輩とアリス先輩はくっつくだろ?」

 ヒサに聞かれていたことは恥ずかしいがヒサのセリフは聞き逃がせないのは確かだ。

「そう、なのか?」
「どっちもお互いのレースめっちゃ見守ってさ、同じキラキラも付けちゃって……違うって方がびっくりしたわ」

 やはりヒサも感じたらしいことに少しホッとする。
 でも、セイ先輩(本人)に自覚がないのはどうしたらいいのか?