三木先輩はボールを左脇に抱えるとそのまま一気にスピードを上げる。
 残り五十で追いつくと、コーナーの外から一気に二人まとめて追い抜いた。

「ヤベ……カッケぇ」

 トモ先輩が零すと男子も招集がかかって先輩たちは列に並ぶ。
 その間に、三木先輩のところには女バスのリレーメンバーが集まって抱き合っていた。
 笑顔の三木先輩。
 それをじっと見つめているセイ先輩。
 やはりセイ先輩は三木先輩のことを……?

「セイ、楽しもうな!」
「はい、ありがとうございます」

 モト先輩に声を掛けられて微笑んだのに、すぐにため息を吐いているセイ先輩。

「トラック内、スタートと第三は正面!第二とアンカーはすぐそこなんで案内に従って下さいね!」

 拡声器で係の人が案内するのを聞いて、先輩たちは顔を上げた。

「入場しまーす!」

 小さく頷いて足を踏み出した先輩たちの後ろ姿をただ見送る。
 同時に退場していった女子。
 退場門の先に目立つ金髪と黒髪が抱き合っているのを見て少しホッとした。
 しかし、その三木先輩の首にあるハチマキがキラッと光ったのを見て、グラウンドの中でしゃがんだセイ先輩に目をやる。
 セイ先輩の首元にあるハチマキにも同じ石が付いていて太陽の光を受けてキラキラと光っていた。
 俺のにもセイ先輩の横に居るモト先輩のにも……もちろん菊川先輩にも付いていない石。

「マジ……か?」

 これは……もしかするのだろうか?