男バスでマネをするようになってすぐ、睨むようにコートを見ている人物が居ることに気がついた。
 それは女バスマネの先輩。
 男バスと女バスは平日は二面あるうちの片面で更にそれを半分ずつにして練習をしている。
 だから、同じくコートの外に居てノートを持っている先輩はすぐ目に入った。
 おそらくブレザーは脱いでジャージだけを羽織ったその姿。
 靴は履いているもののどう見たって体育用の体育館シューズでバッシュでもない。
 女バスにはもう一人マネが居て、見覚えのあるその顔。
 おそらく一年の彼女はTシャツに下は先輩と同じ白地に薄い紫のラインが入ったジャージでバッシュにも関わらず。

「ヨッシー?どーかしたか?」

 トモ先輩に声を掛けられて慌てて顔を戻す。

「何?女バスにかわいい子でも居た?いや、うちの女バスはかわいい子多いんだよなぁ。しかも、強いって最強じゃね?」

 思いっきり女バスの方を見ていたことがバレていて少し居心地が悪い。だが、

「あーやっぱり強いんですねぇ」

 いつでも途切れない声とミスの少ないその練習を見ているだけでも感じた強さ。
 金髪碧眼のキャプテンには驚いたが、その声掛けと圧倒的なプレーのセンスは凄かった。
 だからこそ気になる。
 その空気の中で睨むようなあの視線。
 それは事故直後、自暴自棄になった俺のようでもあり、マネとしてでもバスケに関わるのが嬉しい一方で悔しかった当時の俺と重なって見えたから。