「あれ?これだけでいいんですか?」

 三木先輩が店員に頼んで切り分けてもらった布の量は想像していた以上に少なくて首を傾げる。

「『男バスは黒のエプロンが十五枚あるからそれで足りるし、女バスだけロングエプロンでも作ればいいんじゃないか?』って」

 メモを見ていた菊川先輩が顔を上げて、

「それはセイ先輩が……ですか?」

 そんなのすぐに誰の言葉かわかってしまった。

「えぇ。諦めさせようと思ったけど、それならできるだろう?って……小嶋くん、意外と柔軟な考え方するし、ミキに優しいのよ」

 その少し傷ついたような顔は俺も胸がざわつく。

「だから、小嶋の言う通りなんて悔しいから絶対あいつが思いつかないようなことしてやるのよ!」

 手にまた何か持って来た三木先輩はフンッと鼻息を荒くして、手にあるものを菊川先輩に見せた。

「このビジューかわいくない?」
「売り場どこ?予算次第」

 それを見て菊川先輩は冷静に三木先輩を見上げて聞く。

「えー!いいじゃーん!」
「部の出し物だからそこはちゃんとしろって言われたでしょ?」

 プクッと頬を膨らませた三木先輩にピシャリと言い切った姿はカッコいいが、それもきっとセイ先輩の言葉だろうと思うとため息が零れた。