「吉井くーん」

 呼ばれて振り返るとそこには菊川先輩と三木先輩が居た。

「先輩じゃん」

 力也に肘で突付かれて、睨んでおく。

「お疲れ様です。でも、女バスって午前に練習終わったんじゃないんですか?」

 力也を後ろに退けて俺が前に出ると、三木先輩がケタケタと笑った。

「君たち、仲いいねぇ!うちらは文化祭の企み中!」
「企……み?」

 笑いながらパシパシと腕を叩かれて戸惑う。

「ミキ、早く買いに行くんでしょ?」
「買い物ですか?」

 そんな俺に気づいたらしい力也が俺の背から顔を出して笑った。

「うん!小嶋を黙らせるためには……ね!」
「キャプテンを?」
「あんな制服に腰巻きエプロンだけじゃなくて男バスはベストも作って!女バスはメイドのワンピースにしたいの!」

 言われて、前に菊川先輩に見せてもらった画像を思い出す。

「それを買うんですか?」
「ううん!作るよ!」
「え、誰が?」
「私〜ぃ!」
「「は?」」

 俺と力也の声がカブると、三木先輩はにっこり笑った。

「男が裏方と客引き、女が調理と接客とか古いでしょ?裏方も客引きも調理も接客もみんなですればいいと思わない?」

 バスケをする三木先輩の凄さとキャプテン力は部活中の様子でもわかっていたが、この発想力と判断力、実行力……。
 あのセイ先輩が敵わないと言うのも頷ける気がした。