「ヨッシー!ちょっと付き合ってくれないか?」
「パス出しですか?」

 バッシュを履き終えた俺も立ち上がると、先輩はニッと笑う。

「いや、軽くでいいからディフェンス。てか、一対一やらないか?」

 バウンドさせてこっちにボールを渡してきて、俺はキャッチしてドリブルしながらゆっくりコートに入った。
 ボールを持つとそのまま歩けずドリブルをしてしまうのはもう身に付いてしまっているから仕方ない。

「一対一って……」
「俺が敵わないのはわかってるよ」
「いや、ボコボコにやられるのは俺ですって」

 コートの中央に立つ先輩にボールを投げると先輩はフッと笑う。

「そうか?俺はお前みたいに技術も身長もなければ的確なアドバイスもできないぞ?」
「いや、先輩はプレーでも精神的にも十分頼りになるキャプテンですよ」

 構えようとすると、先輩はピタリとドリブルを止めた。

「そう見えるか?俺は結構いっぱいいっぱいだよ。三木みたいなのがプレーでも精神的にも……じゃないか?」

 ギュッとボールを持つ手に力が入るのがわかる。

「三木先輩……ですか?」
「あいつ、凄いだろ?俺は何一つ敵わないから……」

 俯いた先輩のボールを弾くと、先輩はびっくりしたような顔をした。

「一対一、負けませんよ」

 キャッチして笑うと、先輩も回り込んできて腰を落とす。

「お前も結構言うな」

 笑ったセイ先輩を見て俺も笑いながらドリブルをした。