先輩に連れて来られたのは学校の近くにあるバスケショップ。
 そこは男バス(うち)のOBの家で、

「あれ?ヨッシーも来たのか?」
「メッセージ送りましたよ?」
「店番してて見てねぇよ」

 今、大学一年のウエ先輩は笑ってセイ先輩にボールを渡した。
 俺も部活終わりに何度か誘ってもらってここでバスケをしたことがあったし、ここでミニゲームをやると同じくらいの身長の俺はいつもウエ先輩のマークにつくことになる。

「今日ってあとは誰が来るんですか?」

 店の奥にあるバスケコートにセイ先輩に続いて頭を下げつつ入ってから聞くと、

「俺とお前だけ」

 セイ先輩は壁際で腰を降ろした。
 そのままボストンバッグからバッシュを取り出して履き始める。
 その大きなかばんは宿泊学習に先輩たちが行っていたことをまた思い出させるようで、俺は目を逸した。

「ってか元々は俺だけの予定だったし」
「へ?」

 近くに座ってバッシュを履いていた俺はその動きを止める。

「勉強ばっかしてきたんだぞ?多少フリータイムにバスケはしたけど、どう考えたって鈍ってるだろ?」

 ネクタイを外してからパッと立ち上がってドリブルをする先輩はそんな鈍っているようには見えない。
 ドリブルをして切り返したり、ターンをしたり……まぁ、制服だからか、いつもの雰囲気とは違う気はするが。

「自主練。あいつ自信なさ過ぎてしょっちゅうこうなんだよ」

 いつの間にか現れたウエ先輩の言葉を聞いてもう一度セイ先輩に目を戻す。
 自信がないなんて、余裕があってミスも少ないイメージのセイ先輩にはない意外な姿だった。