「……お願いします」
「「お願いしますっ!!」」

 コートに挨拶をしたメンバーはそのまま俺の後ろに並んで、隣に来た力也はまた俺の腕を引っ張った。

「は?」
「ほら!走るのはいいだろ?」

 後ろからモモにも背中を押されて走り出してしまう。

「ほら!流星、掛け声!」
「はぁ!?」
「吉井!声出せー!」

 澤田先生まで煽ってきて前を向いた。

「啓せーい!ファイっ!」

 やけになって叫ぶと「オーっ!」と後に続く。
 笑いながら大声で走って俺はストレッチまでも一緒にみんなとやってやっとマネージャーの定位置に戻った。

「いい表情(かお)してるぞ」

 澤田先生にニッと笑われて先生を見ながらメガネをゆっくり上げる。

「……俺はもう腐ってないんでそんな気遣って頂かなくても大丈夫ですよ?」

 そのままノートに目を移して開き始めると、先生の笑い声が聞こえた。

「別にそんなつもりじゃないさ。単純にお前がキャプテンでもいいんじゃないかな?ってだけだ!」
「……冗談ですよね?」
「さっき言っただろ?それにやってみて何か不都合あったか?見ろよ!みんな生き生きしてるだろ?」

 じっと見ても先生はにこにこと笑っている。

「走ってる時もアップも、不満そうな奴なんて居なかったぞ?」

 コートの中を見て「な?」と歯を見せた。