単純に……

「吉井くん」

 菊川先輩が話しかけてくれるようになった。

「男バスは夏休み最初の宿泊学習で二年が居ない間も部活やるんでしょう?」

 まぁ、マネージャーとしての話がほとんどだけど。

「そうですね。シューティングとか軽い練習ですが、澤田先生は一年だからいらっしゃるんで」

 答えると、先輩は持っていたノートを開いた。

「じゃあ、私たち帰って来たらまた話すけどね」

 書いてあったのは“体育祭”と“文化祭”の二つに分かれているメモの数々。
 そういえばこの学校は学校祭にかなり力を入れていることを思い出した。
 細かく書かれた最初の原案から精査されていったのがわかるそのメモ。

「このノート渡しておくから見ておいてくれる?一年生だしまだどんな感じかもわからないでしょ?」
「そうですね」

 全くイメージできなくてただ受け取ると、先輩はくすくすと笑い出した。

「もしかして、こういう行事とか苦手?」
「いえ?」
「うーんとね……」

 自分のスマホを出してスワイプし始めた先輩を見つめる。
 今、ここにセイ先輩が来たら先輩はそっちを見てしまうんだろうか、なんて心配になりながら。

「これこれ!」

 画面をこっちに向けられて覗き込む。
 見せてくれたのは去年の写真のようだった。