制服に着替えると力也が俺のリュックも持って駐輪場へ。
 俺は鍵を返しに職員室へと向かう。

「失礼します」

 入ると、ちょうど顧問の澤田(さわだ)先生と目が合った。

「吉井、お疲れ」

 優しい笑顔の先生に鍵を渡して今日の練習の様子を報告する。

「それならハイポからの合わせと詰まってインからアウトも練習に入れるといいかもなぁ」

 腕を組んで考える先生を見て俺も少しだけ考えてみた。

「コタ先輩とユウ先輩がハイかローで、俺もハイのディフェンス入るんでハイからローにスクリーンで、上がったハイがローと合わせてシュートとか?」

 うちのセンターである二人の先輩を出すと、先生は頷いてにこっと笑う。

「あぁ、それを皆川(みながわ)黒澤(くろさわ)にもわかりやすく教えてやってくれ」

 この春からバスケを始めた初心者の二人の名前が出て今度は俺が頷いた。
 少し小さいが走力はあるヒサ(皆川久志(ひさし))と背はほどほどで器用なクロ(黒澤敦哉(あつや))。
 二人とも教えたら素直に聞いてくれるいい奴だ。

「ま、ディフェンス軽いそれを左右五本ずつで、ディフェンス本気のアウトへパスもありが五本ずつ……かな?」
「はい」

 返事をしながらメモを取る。

「吉井は大丈夫か?」
「?大丈夫だと思いますが?」
「ならいい」

 微笑んだ先生に頭を下げて俺は職員室を後にした。
 男バス顧問であり、生物教師であり、俺たち一年一組の担任でもある澤田先生は本当に生徒をよく見ていると思う。
 先生が言いたいことはわかっていた。