「……あのさぁ」

 帰り道、力也が不意に黙ったかと思ったらこっちを見てきて首を傾げる。

「流星って……あれはガチ恋?」
「は?」

 意味がすぐには理解できなくて思わず足を止めてしまった。
 道路に足をつくと、すぐに力也もブレーキをかけて振り返る。

「女バスマネのあの先輩!」
「……菊川先輩?」
「いや、名前は知らんけど!この前残ったりしたのもあの先輩と、だろ?」

 そうだが、すぐに頷くのは何となくためらってしまった。

「付き合ってんの?」
「んな訳あるか」

 道端でそんな堂々と話したくはなくて、力也の横に移動して声をひそめる。

「そうなのか?でも、お前は好きだろ?」
「……」
「……え、もしかして自覚なかった?」

 まさか、という力也のその顔は今まで何度も目にしてきた。
 俺はいつも自覚するのが遅い。
 そして、いつも気づいたらもう相手には彼氏が居る。
 それを何度力也に言われてきたか。

「その先輩、彼氏居んの?」

 力也も同じことを思ったのだろう。
 言いにくそうなその言い方は笑えないのに笑うしかなかった。

「でも、お前もしょっちゅう女バス見てるけど、先輩も男バス(こっち)見てんじゃん?」
「……そう、か?」
「目、合わねぇの?」
「合う……気はしてる」
「うっわっ!初カノとかうっぜぇ!!裏切り者がーーーっ!!」

 バチンと背中を叩かれて呻く。
 暑いだけな気がした晴れ間もやけに輝いて見えた。