あれから部活が始まる前、先輩に少しスコアを見てもらうようになった。



「これでいいですか?」
「……」
「え?違いました?」
「ううん。綺麗な字で印刷かと思ったの」
「クソ真面目な面白みのない字って言われますが?」
「あー、まぁね」
「そこは否定して下さいよ!」

 先輩が笑ってくれる時間。
 それはちょっと特別な気がして嬉しかった。

「めっずらしー」

 声がして振り返ると、そこには三木先輩が居てボールをシュルシュルと指の先で回している。

「何が?」

 先輩がノートを整理しながら顔を上げると、三木先輩はニヤリと笑った。

「いやぁ?キクが楽しそうだなって思っただけ」
「は?」

 眉を寄せた先輩はそのまま腕にある時計に目を移す。

「ミキ、時間」
「えー、もう?」
「時間」

 ブレることなく菊川先輩が睨みを利かせると、三木先輩はため息を吐いてボールを降ろした。
 カゴに入れてコートに向き直ると「やるよー!」と声をあげる。

「菊川先輩、ありがとうございました。またお願いします」

 頭を下げると、先輩はこくりと頷くがもうこっちを見てくれることはなかった。

「っし、始めるか」

 男バスの方に戻ってくると、こっちでもセイ先輩が声をかけている。
 エンドラインに並ぶ先輩たちを見て、俺もサイドラインに立った。