お互い顧問に部室の鍵を返してまた職員室を出たところで一緒になった。

「吉井くん、ありがとうね」
「何がですか?」

 駐輪場へと歩きながら小さな先輩を見つめる。
 俺から見ると先輩は頭が見えるだけで表情はわからない。

「また新体操を楽しめるとは思わなかった」

 こっちを見て微笑む先輩を見てドキッとする。
 その顔はめちゃくちゃかわいくて、いつものキリッとした顔より少し幼く見えた。

「ダメだと思ってても意外と楽しめるモンですよねぇ。俺ももっかいバスケした時、何であんな腐ってたんだ?って思いましたもん」

 俺も笑い返すと、先輩はなびく髪を押さえて前を見る。

「うん。そうだね。でも……」

 今もどんな顔をしているのか見てみたい。
 こっちを見ていて欲しい。

「ミキにもここまで見せてないのになぁ」
「はい?」
「ミキも私が新体操やってたことは知ってるけど見せてはいないの!これって……傷のある者同士だから?……傷の舐め合いかな?」

 チラッと見上げてくるタイミングがあまりにも良過ぎて。
 ちょっと困ったようなその顔もかわいいと思ってしまって……。

「ダメですか?」
「えー」
「傷だなんて思わなくなっちゃいましょうよ!」

 ポジティブ過ぎかもしれないけど、俺だけにかも……なんてテンションが上がってしまう。

「何それ」

 笑う先輩の横に居られることが嬉しかった。