表情は見えないがその声がやけに寂しそうに聞こえて下手には立ち上がれない。
「吉井くん、優しいね?」
垂れた髪を耳に掛けながら見下ろされて首を傾げる。
「何の競技だったか聞かない」
「聞いてもいいなら聞きたいですよ」
素直に漏らすと、先輩はフッと笑った。
そして、立ったままゆっくり体を後ろに倒していく。
驚いているうちにそのままブリッジのように手まで付いてクルンと回った。
流れるようなその綺麗な動きに驚きのあまり声が出ない。
瞬きを繰り返していると先輩は小さく笑った。
「わかった?」
「……体操?」
「惜しい」
笑われてもそれ以上の答えなんて思い浮かばない。
「器械体操ではなくて、新体操の方ね」
「あのリボンとかですか?」
「そう、マイナーよねぇ」
言いながら伸びをした先輩を見ながら俺もやっと立ち上がった。
「でも、長くやってたんですか?」
「んー、そうね。三歳からだから……十二年?でも、辞めてかなり経ってるからさすがにもう硬いけどねぇ」
言いながらスッと足を揃えた先輩。
「硬い人間はそんなことできないですけどね?」
「そう?」
メガネの位置を直しながら目を合わせると、先輩はまた少しだけ笑った。
「はい。先輩がいつも立ってる姿がまっすぐで綺麗なのはその積み重ねだろうし、今も……いつも指先までピンと伸びているのは新体操が身についているからでしょう?」
指摘すると、先輩は踵をつけて足先を開いていたそれをパッと崩す。
「吉井くん、優しいね?」
垂れた髪を耳に掛けながら見下ろされて首を傾げる。
「何の競技だったか聞かない」
「聞いてもいいなら聞きたいですよ」
素直に漏らすと、先輩はフッと笑った。
そして、立ったままゆっくり体を後ろに倒していく。
驚いているうちにそのままブリッジのように手まで付いてクルンと回った。
流れるようなその綺麗な動きに驚きのあまり声が出ない。
瞬きを繰り返していると先輩は小さく笑った。
「わかった?」
「……体操?」
「惜しい」
笑われてもそれ以上の答えなんて思い浮かばない。
「器械体操ではなくて、新体操の方ね」
「あのリボンとかですか?」
「そう、マイナーよねぇ」
言いながら伸びをした先輩を見ながら俺もやっと立ち上がった。
「でも、長くやってたんですか?」
「んー、そうね。三歳からだから……十二年?でも、辞めてかなり経ってるからさすがにもう硬いけどねぇ」
言いながらスッと足を揃えた先輩。
「硬い人間はそんなことできないですけどね?」
「そう?」
メガネの位置を直しながら目を合わせると、先輩はまた少しだけ笑った。
「はい。先輩がいつも立ってる姿がまっすぐで綺麗なのはその積み重ねだろうし、今も……いつも指先までピンと伸びているのは新体操が身についているからでしょう?」
指摘すると、先輩は踵をつけて足先を開いていたそれをパッと崩す。

