彼女である先輩の家で二人きり。
 ケーキを食べさせてもらって、紅茶を飲んで、先輩のこれまでの新体操の話を聞いたり、トロフィーとか試合の動画を見せてもらったり。
 手を繋いで隣に寄り添ってくれる先輩といっぱい話していっぱい笑った。
 明日からはまた部活にも戻ってくると聞いて嬉しくなって、でも、もう最後の大会が近づいてきていて先輩の引退も近いと実感もして寂しくなる。

「……何であと四日遅く産まれなかったんですか?」
「あと四日でも学年変わんないって。五日でしょ?」

 座ったままギュッと抱き締めると、先輩は俺に体を預けてきてフッと笑った。
 先輩の誕生日は三月二十八日。

「そんな僅かで先輩とか悔しいです」

 ブレスレットとお揃いのネックレスも既に注文していて準備は万端だが、それが四月であったなら同学年だったのにとどうしても思ってしまった。

「でも、吉井くんだって三月生まれなんだから約一年違うじゃない?」
「俺は四月が予定日だったのに滑り込んだんですよ」
「何それ」

 笑う先輩の頬に触れて目が合うと、顔を近づけてそっとキスをする。

「……流星って呼んだ方がいい?」
「じゃあ……」
「名前はヤメて!」

 先輩が“政子”を嫌っているのは知っていたのでそう呼ぶつもりはない。

「まさ?まーちゃん?」
「吉井くんが“ちゃん”付けするとか……照れる」

 考えながら口にしてみると、先輩は顔を赤くして顔を隠す。