「苦しい」

 笑いながら腕を叩かれてそのまま座る俺の上に引き寄せる。

「だって嬉しいですもん!」

 座っていると顔は近くて、キスをすると先輩は少し赤くなって俯いた。
 明後日はホワイトデーで、俺の誕生日。
 俺は自分の誕生日よりホワイトデー優先で当日もひろにぃがバイトしているあのカフェを予約している。
 先輩が俺の誕生日を知っていて、しかも、祝ってくれるなんて思っていなかったから。

「学校にこれは持って行けないから当日ではないけどね」

 俺の脚の上でそうやって恥ずかしそうにする先輩がかわいくて仕方ない。

「嬉し過ぎてヤバいです!」

 先輩を抱いたままケーキの写真を撮って、嬉しくて口の端が上がりっぱなしだ。

「当日はあのカフェ予約してるんで一緒に行きましょうね?」
「じゃあ、プレゼントは当日ね?」
「え?ケーキ(これ)じゃなくて?」

 腰に手を回したまま聞くと、先輩はギュッと俺の頭を抱き締めてくる。

「第二弾」

 笑う先輩に完全に撃ち抜かれた。

「っ……ケーキ、食べたいです」
「じゃあ……」

 俺の上から退いてしまってまた部屋から出ていく先輩。
 持ってきた白のチョコペンで『Ryusei』と器用に書くと少し照れくさそうに笑った。
 そのケーキをまた写真に収めて確認していると、

「食べる?」

 先輩はフォークを持って首を傾げる。
 頷くとケーキを一口乗せてこっちに持ってきてくれて、夢みたいなその光景にクラクラした。