「先生と何話してたの?」

 先生が送ってくれると言ってくれたのを断って体育館から駅に向かって歩いていると、先輩がじっとこっちを見てくる。

「今日のお礼を言われてただけですよ?」
「本当に?」
「はい」

 微笑んで手を出すと先輩もすぐに手を繋いでくれた。
 それを俺のコートのポケットに一緒に入れると、先輩は少し恥ずかしそうにする。

「……今日、まだ時間ある?」
「はい!どっか行きますか?」

 答えながらそっと反対のポケットを上から触った。
 そこにちゃんとあることを確認していると、

「うち、来る?」

 先輩はこっちを見ないままポソっと零す。

「へ?」

 あまりにもの小さい声に聞き間違いかと思う。でも、

「いや!この前のバレンタインはみんなと同じマカロンとブラウニーしか作れなかったからケーキ焼いてて!でも、それは持っては来れなくて家にあって……ね?」

 珍しく早口でワタワタしている先輩をギュッと抱き締めた。

「行っていいんですか?」

 抱き締めたまま聞くと、先輩は小さく頷いて俺の腰の辺りを握る。

「じゃあ、先に……これ」

 先輩と少しだけ離れると、俺はポケットからさっき確認した包みを取り出して差し出した。

「え?」

 包みを見てからこっちを見上げる先輩。

「少し早いですけど、明後日はホワイトデーなんで!」

 先輩の手を取ってその手のひらに乗せて微笑むと、先輩はギュッと俺にしがみついてきた。