最後の最後でドッと疲れた気がする。

「吉井くん?」

 服の裾を引っ張られて閉じていた目を開けると、先輩がこっちを見上げていた。
 いつものように腰に手を回してしまってその薄い生地に触れてドキッとする。
 先輩の肌に触れてしまったかのような、むしろ、それ以上に罪悪感を感じるのはなぜか?

「真っ赤だけど?」
「……すいません」
「何で謝るの?」
「いや……」

 今更また意識してしまって先輩を真っ直ぐ見れない。

「……エッチ」
「エッ……っ……」

 違う!と否定するのはちょっと違う気もしてぐぬぬと堪えて返事に困ると、先輩はくすくすと笑い出した。

「着替えてくるね!」

 ニコッと笑われてクルンと回転した時に見えるスカートの下にまたドキッとする。
 ダメだ。
 保たない気がする。

「お疲れ様!今日急だったのに本当にありがとうね!」

 先生に腕を叩かれて振り返ると、先生は俺に小さな紙袋をくれた。

「え?これ!!」
「お礼!」

 ニコッと笑われて恐縮していると、

「マサに再び新体操の楽しさ取り戻させてくれたでしょ?」

 じっと見られて首を傾げる。

「楽しそうにバスケするって流星くんの話を羨ましそうにしてたわ。今回マサも演技することに決めたのはキミのお陰よ?」

 微笑まれて嬉しさがじわっと広がった。
 俺も先輩の“好き”を守れたらしい。

「マサをよろしくね!」
「はいっ!!」

 手を差し出されて、俺は両手でしっかりと握った。