「まだ澤田先生なら居るかも」
立ち上がって走り出そうとした俺の手を先輩が掴む。
首を横に振られて、俺は判断できずに立ち竦んだ。
「ごめ……ちょ、取って……」
言われてさっき置いた缶を手渡す。
先輩は震えながら少し飲んでふーっと何度も息を吐き出した。
「ごめん」
「大丈夫なんですか?」
とりあえず震えは治まった先輩をしゃがんで見つめる。
頷いた先輩はもう一度缶に口をつけてから両手で缶を握った。
「……私もね。故障して……それで今女バスのマネージャーやってるのよ」
どこを見ているかわからないまま呟かれる言葉。
「故障?」
「うん。股関節がね」
「そう、なんですね」
気の利いた言葉なんて思い浮かばなくてうまくしゃべれない。
さっきの先輩の様子は尋常じゃなかったから。
「普段の生活は問題ないよ。ごめんね。ちょっと自分が情けなくって」
「情けない?」
「吉井くんみたいにもう一度その競技に関わるなんて私にはできなかったから」
先輩の目にはいつもの強さは感じられなかった。
むしろ、弱くて簡単に折れてしまいそうで手を伸ばしたくなる。
「俺は周りに恵まれてただけです。幼なじみが引き戻してくれたから」
「そっか……」
「コートに入らないのは股関節のことがあるからですか?」
「ううん」
先輩は立ち上がって空を見上げた。
スッと立つその様子は確かに不便は感じられない。
「結局私は大好きな競技を一生懸命やれる人たちが羨ましくて……まだうまく向き合えていないのよ」
立ち上がって走り出そうとした俺の手を先輩が掴む。
首を横に振られて、俺は判断できずに立ち竦んだ。
「ごめ……ちょ、取って……」
言われてさっき置いた缶を手渡す。
先輩は震えながら少し飲んでふーっと何度も息を吐き出した。
「ごめん」
「大丈夫なんですか?」
とりあえず震えは治まった先輩をしゃがんで見つめる。
頷いた先輩はもう一度缶に口をつけてから両手で缶を握った。
「……私もね。故障して……それで今女バスのマネージャーやってるのよ」
どこを見ているかわからないまま呟かれる言葉。
「故障?」
「うん。股関節がね」
「そう、なんですね」
気の利いた言葉なんて思い浮かばなくてうまくしゃべれない。
さっきの先輩の様子は尋常じゃなかったから。
「普段の生活は問題ないよ。ごめんね。ちょっと自分が情けなくって」
「情けない?」
「吉井くんみたいにもう一度その競技に関わるなんて私にはできなかったから」
先輩の目にはいつもの強さは感じられなかった。
むしろ、弱くて簡単に折れてしまいそうで手を伸ばしたくなる。
「俺は周りに恵まれてただけです。幼なじみが引き戻してくれたから」
「そっか……」
「コートに入らないのは股関節のことがあるからですか?」
「ううん」
先輩は立ち上がって空を見上げた。
スッと立つその様子は確かに不便は感じられない。
「結局私は大好きな競技を一生懸命やれる人たちが羨ましくて……まだうまく向き合えていないのよ」

