土日も練習を続けた先輩をやっとただ見つめられる三月の発表会当日。
 着いた体育館は何度かバスケでも試合をした経験のある大きな場所で、新体操もスポーツだと実感する。
 だが、歩いて行く小中学生くらいの女の子たちとその親であろう集団。
 手を繋いで歩いて行く幼稚園児くらいの親子。
 明らかに俺の存在は不自然だった。
 ヤバい。
 変質者か何かと勘違いされないか?
 キラキラした髪型やメイク。
 まだ歩いて行く子たちはジャージ姿ではあるが新体操って……。
 頭の中にあるイメージを思い浮かべて変態だと言われないか不安になる。
 せっかく会場まで来たのに入れない。
 あの中に先輩が居るのに……。
 思っていると、スマホが着信を知らせてきた。

『まだ会場着かないの?迷った?』

 いつもの電話より少しキリッとしているのは周りに人が居るからかもしれない。

「いや、着いてるんですが俺の場違い感凄くて。何かためらっちゃってどうしようかと」

 そうやって体育館に背を向けても、歩いていく親子は目に入って睨まれている気もする。
 だよなぁ、父親には見えないだろうし……こんなとこに男が一人。
 警戒されるのも仕方ない気がする。

『全く……仕方ないなぁ……』

 ため息を吐かれた、と思ったらポンと背中を叩かれた。