先輩がくれた包みには淡いピンクと濃いピンクのハートのマカロンとブラウニーが入っていた。
 これを……作ったのか?
 チョコクリームが挟んであるマカロンを持ち上げてマジマジと見てしまう。

「おい、流星……ん?それ……」

 ノックもなくドアが開いて、大学一年の兄さん(聖夜(せいや))がニヤりと笑った。

「へぇ、もらったんだ!」

 何となく見られたくなくて袋に戻すが、兄さんはそのまま部屋に入ってきて俺の机に手を付いてくる。

浩也(ひろや)が言ってたの本当かよ」

 兄さんとひろにぃは大学は別々になったのだが、ちょいちょい一緒につるんでいるため話題になったのかもしれない。

「ひろにぃに何聞いたの?」
「ん?クリスマスに黒髪美人とケーキ食いに来たって。しかも、ちょこちょこ行ってんだろ?」
「あぁ」

 誤魔化すメリットも感じられず、面倒臭くもあって素直に認めた。

「付き合ってんの?」
「そうだけど?」
「ハッ、生意気〜ぃ」

 鼻で笑うと、兄さんは俺の本棚の前に立っていくつか手に教科書を乗せる。

「これ借りるぞ?」
「それ中学ん時のだけど?」
「何事も基礎からだろーが!!」
「へぇ……」

 そのまま出て行く兄さんを見送ってドアが閉まるのを確認した。
 包みに目を戻してそれだけで顔が綻んでしまう。
 先輩が作ってくれた……その姿を想像するだけでニヤニヤしてしまってどうしようもなかった。