「先輩が初彼女で、俺は何もかも初ですって!」

 寒くて先輩を俺のコートの中に入れてみる。

「本当に?」

 すっぽりと俺に簡単に包まれる小さな先輩はまだ驚きを隠せないようだった。

「力也に聞いてみます?あいつは幼稚園入る前から一緒の幼なじみなんでいらんことまで知ってますよ?」
「いらんことまでって」

 少し笑った先輩を抱き締める。

「本当に先輩が初彼女で、初デートだって先輩で……さっきのが俺のファーストキスですよ」

 その頬に触れて微笑むと、先輩はまた少し照れくさそうにしてこっちを見た。
 先輩も……ではないとはわかっているが、何となく妬けてしまう。

「先輩……」

 冷たいその頬に触れたまま呼んで腰を折った。

「もう一度……ダメですか?」

 じっと強請るように見つめてみると、先輩が赤くなってうぐっと言葉を詰まらせる。
 そのかわい過ぎる反応に満たされつつ、顔を近づけた。
 冷たい唇が触れて……今度は頬と腰に手があるからか逃げられない。
 少し押し付けて離れると、先輩はまた俺の胸元に顔を隠した。
 さっきの倍は長く触れていた唇。
 俺の口までちょっと潤うほどのキスに今更恥ずかしくなる。
 ヤバいな。
 幸せ過ぎて……死ねるかも。
 いや、死にたくねぇな……ハマるわ。
 先輩を抱き締めながら反芻して、一人脳内でアレコレ想いを膨らませていた。